11月13日に認知症の第一人者である長谷川和夫先生がお亡くなりになられました。精神科医として認知症の患者さんに向き合い、ご自身も認知症になられたことを公表されました。11月25日の読売新聞に特集の記事が掲載されていました。
1990年代あたりから、鍼灸マッサージ業界では在宅で患者さんの治療にあたることが増えてきました。現在は高齢化社会の進行とともに、在宅での鍼灸マッサージの需要は非常に大きいものとなっています。それに伴い、治療院に来所できないような疾患の患者さんの治療にあたる場面が増えてきていると思います。まさに、認知症もその疾患の一つではないでしょうか。1990年以前の治療院を中心とした事業形態の時期と比較しても比べ物にならないほどの増加だと感じています。
では、鍼灸マッサージは認知症に効果はあるのでしょうか?もちろん、鍼灸マッサージの外的な刺激が、認知症に効果的であることや、認知症を予防するアロマの香りの調合など様々な視点からの研究が進んでいます。
また、長谷川先生も普及に貢献された「パーソン・センタード・ケア(そのひと中心のケア)」という理念の中での鍼灸マッサージ師の役割ということも重要ではないかと思います。パーソン・センタード・ケアとは、認知症の人を“1人の人間”として尊重し、その人の立場に立っておこなう認知症のケアという理念です。パーソン・センタード・ケアを取り入れた施設では、認知症に改善がみられたり、進行が遅くなるなどの効果が出ています。
パーソン・センタード・ケアの核となる5つの心理的要素は、
①自分らしさ
②結びつき
③携わること
④共にあること
⑤くつろぎ
があります。
例えば、鍼灸マッサージでは、痛みや苦痛を取り除くことで、気持ちがくつろぐことができたり、趣味などに向き合うことができ、自分らしさを取り戻し、趣味を通じて社会との結びつきになるなどに貢献したりすることもできるなどのお手伝いができるのではないでしょうか。
今後も在宅鍼灸マッサージの需要が増加していく中で、学生中から認知症の学習や理解、実際の認知症患者さんと接する機会や、臨床の実際を学ぶことは非常に大切なことだと感じます。