一昨日の夜は冬の嵐でした。夜には雷が鳴り、何度か目が覚めてしまうほどでした。冬の雷は発生する高度が低く、夏の雷と比較すると威力は100倍近くあります。一発雷とも言われ注意が必要だそうです。
話題はそれますが、昨日、人間国宝の歌舞伎役者、中村吉右衛門さんがお亡くなりになられました。歌舞伎のみならず、テレビや映画でもご活躍されました。日本の伝統芸能の重鎮がお亡くなりになられ非常に残念です。心からお悔やみ申し上げます。
さて、伝統芸能である狂言の中に『雷』という演目があります。
京(都)では、活躍できずヤブ医者(時代的に鍼灸や漢方で治療する医師)と呼ばれ、医師の少ない東の地で仕事をしようと、関東を通り東北方面に向かっている途中に突然の雷雨に襲われるという所から話は始まります。雷雨に襲われていると、突然、空の上から雷様が地面に落ちてくるではありませんか。ヤブ医者は恐ろしくなり屈んで様子を見ていると、雷様は屈んでいる人間が医師だということに気づきます。雷様は、最近、体の調子が悪いんだ(劇中では、中風と言われています)とヤブ医者に相談します。ヤブ医者は薬を処方して雷様に飲ませたところ雷様の体調は良くなりました。次に、地面に落ちた拍子に腰を痛めてしまったと。そこで、ヤブ医者は雷様の腰に鍼治療をしたところ、腰の痛みも良くなってしまいました。雷様は、ヤブ医者へお礼に今後800年間、豪雨や干ばつが起きないことを約束しました。そして、ヤブ医者のことを、日本一の医師であると称えました。
このようなお話です。(私の記憶からのあらすじです。間違っていたらご容赦ください笑)
この時の、鍼を刺すときの音が「こつーん、こつーん」という音で表現されており、役者の方の動きが金槌を使うような動作をしていることから、現在、日本で多く用いられている“管鍼法”ではなく“打鍼術”という技術が用いられていたと思います。そこまで分かるとは、ほんとに芸が細かい!!
最後に、中村吉右衛門さんの過去のお言葉をお借りして、
『芸を確立させていくのは、まずは真似から入るしかありません。ただ、そこで止まってしまったら単なる物真似で終わってしまう。真似ができたところがスタート地点。ある役者が練って練って作り出した芸を、次の代が真似て、そこでさらに練って自分らしさを付け加えてそれが代々続いていく。常に磨かれていかなければ伝統ではない。』
鍼灸マッサージにも通じる、非常に大切なお言葉です。